BSE牛検査の怪

 

 アメリカでBSE牛が出て、全頭検査しないならアメリカ牛を輸入させないという日本側と、全頭検査などコストがかかるだけで安全を担保する根拠がない非関税障壁だと争っていた。結局、20ヶ月以上は全頭検査、20ヶ月以下は不要ということで輸入再開に向け手続きをすすめることで合意したという。これは、20ヶ月以下の月齢ではBSE判定ができないという事実を認め合ったことによるというのが小生の理解だが、報道によっては20ヶ月以下の牛なら安全と言っていたりするのは意図的なものなのか勘違いなのか、本当に怪しげな話である。さらに不思議なのは、米国産牛は全頭検査でなくてもOKとするが、国内では国民の感情に配慮し、全頭検査を継続する自治体には同額の補助金を続けるという。「安全より安心に配慮したのだ」とかいうわけの分からない発言がTVにながれていた。技術的に20ヶ月以下の月齢でBSE判定ができないという事実を認めるなら、20ヶ月以下の検査は国費の無駄遣いでしかなくやめるべきである。(この結論がアメリカから牛肉の輸入再開にこぎつけるために節を曲げた結果だというのでは、それはそれで論外である。)

 

結局のところ20ヶ月以下の月齢ではBSE判定ができないなら、判定できる20ヶ月を過ぎた牛だけを食べるか、或いは判らないものはしかたがないと目をつぶって、全部20ヶ月になる前に食べてしまうことである。安全を考えるなら、20ヶ月を過ぎていて全頭検査したものだけを輸入することにするのがもっとも合理的なのである。それに、米国での固体管理はかなり杜撰で、20ヶ月以上全頭検査が守られるかどうかも怪しいという話がある。これも今から杜撰なものを正確なものにしようとしても無理である。月齢の代わりに体重を使うべきであろう。安全サイドに決めた一定以上の体重を月齢の目安にすれば良く、誤差はコントロールの範囲になる。もともと完全というのは無理な話で、安全に近づけるしかできない。合理的手段によらない安心など意味が無いのである。現状でいえば、安全と言うには、検査可能な20ヶ月の月齢を過ぎてから食べる事にし、20ヶ月を過ぎている事を確認する手段を確保する必要がある。一方では、20ヶ月前であっても判定できるような方法を発見することだろうし、本当に牛と羊だけがこの病気になるのかどうかさえ怪しい、BSEの原因となるプリオンの混じった肉骨粉をたべたのは、他の哺乳動物、鳥類、魚類といくらでもいるはずであるから、真の原因を見つけ発病のメカニズム、治療法を探らなければいけないのは言うまでもない。検査していない他の肉(=食物)からの感染の可能性を考えれば、今やっている検査なぞ気休めだと思えなくも無いのだ。しかし、やれることをやるしかないのだ。更に言えば、今まで役にたたないと分かっていて20ヶ月以下の牛を検査してきたのかと日本の姿勢を問題にしたい。金が無駄なだけではない。医療に携わる人間と言う資源の無駄遣いであるからだ。真の解決に向けられるべき人的資源が役にも立たない検査に向けられていることになるからだ。

 
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