JRのリスク管理に疑義

 

 最近、JRで事故が多い。それも、人身事故が多いらしい。復旧までに時間がかかり、ダイヤは混乱し、危険を感じるほどのひどい混雑にいたる事も有る。事故の原因が誰にあるのかはともかくとして事故が起こってからのJRの対応に気になる事がある。混雑状況の把握と対応ができているように思えないのだ。

 JRの車内放送、駅の構内放送を聞いていても、実に事態をつかみにくい.。どれだけ混雑していて、どれだけ遅れているのか全くわからない。「遅れて混雑して申し訳ありません」の一点張りだ。わからないだけなら、「すいません」と謝ってもらえば気がすむところもあり、JRも頑張っているのだからしかたがないということになるが、本当に安全対策など講じられているのかと恐怖すら覚える経験が何度もある。ある時、私の乗った列車は、前の何かの事故によって非常に混雑していた。「事故のためダイヤ調整をしています」との理由で、満員のまま駅と駅の間で列車を止める。殆どまともに立っていられないし、窓ガラスに押し付けられて何時割れるか冷や冷やしている状況が続く。やっと動いて駅に着いたかと思えば、更に人が殺到してくる。もう、乗れる状況ではないのに、いつまでもドアを開けたまま駅に止まっている。止まっていれば、またホームに人がたまってくる。この間のJRの運行方針は、遅れている電車の状況に合わせて、なるべくたくさんの人間を拾って行こうとしているかに思える。そこには、どこまで押し込んだら危険かという目安が無いのではないか。

 

 JRのリスク管理に対する疑問は、

 

JRは、これ以上人を列車に乗せないという基準をもっているのだろうか?

 

これ以上、駅構内もしくは、ホームに人を入れないという基準をもっているのだろうか?

 

その基準とする尺度が用意されていて、計測値がタイムリーに把握されているのだろうか?

3点である。公共交通機関の場合、不特定多数の人間に適切な行動を取ってもらわないとうまく運行することができないわけだから、適切な情報を与え納得してもらって行動を制限してもらうという考え方に変えて行くべきだと思う。ただ、「お忙しいところご不便をおかけします」と謝って辛抱させるだけでなく、情報を与え行動パターンを変えてもらう。また、本当に危険な時はもう危険なのだということを告知して、それ以上電車に乗せない、ホームに入れないなどの制限行動を取ることを納得してもらう必要がある。

 

 まず、混雑度を表わす計数が必要だ。地震の震度にあたるような計数が必要で、皆がこの計数を見れば実感がわくレベルまで普及しなければならない。この計数の尺度が決められたら、次はどうやって計測するかだ。ホームや駅構内は監視カメラと目視で計数をだせるだろう。電車の混雑度はモニターをお願いするのが良いと思う。JRにその度合いを報告するための簡単な連絡機を持ってもらう。彼・彼女は必ず利用する電車の識別コード(どの電車からの情報か区別するという意味)を乗車前に確かめておいて、混乱に巻き込まれたら何処でどのような状況なのかの情報をJRに伝えるのである。結構、ボランティア的にやってくれる物好きな人がいるのではないかと思う。だいたい、乗る電車というのは決まっているものだし、電車に乗ってしまえば閑なものである。皆の認知を得るという意味で、普段からこの混雑指数を発表していくべきであろう。ちようど高速道路脇の渋滞Xキロを表わす電光掲示板のようにである。

 

 皆が、混雑度Aランクがあの程度、Bランクがあの程度という認識があって、あの状況は危険なもしくは不快すぎる状況だから、しばらく待機しようとか、迂回しようとかの行動を取れるようになるのではないだろうか。「危険ですから、もうホームには入らないほうがいい」と言われれば、時間に余裕があってコーヒーでも飲んで行こうかという人は結構いるもんだと思う。できれば、最近の進んだレストランで待たされる時のように、ブザーの鳴る携帯機械でも渡してもらって、三回連続音は混雑度Aランク、二回連続音は混雑度Bランクというようなお知らせがもらえれば、もっとありがたい。モーニング・コーヒーを飲みながら、混雑も収まってきたからそろそろ行くかというように行動できるわけである。また、JRが各駅の情報をページとするホームページを作って、この情報を流せば、行った先の喫茶店やファーストフード店がこのホームページを見せることが考えられる。まるで高校野球や日本シリーズを流していた喫茶店のようにである。iモードのようなものが普及すれば、喫茶店に入らなくともすべての人が個人単位でこの情報を使うことも可能である。

 

 そして、決められた尺度に達したら、直ちに、電車にこれ以上乗せない、これ以上ホームにいれない、これ以上駅の構内に入れないの各レベルの処置を実行してほしい。リスク管理の要点は「どうなったら、どうする」がしっかり決まっていることである。その処置の発動には、できる限り判断が入らないようになっているべきであり、どうしても判断の余地を残すなら決定者を決めておく必要がある。このような時、群集心理から騒乱状態が起こりがちだが、普段から混雑度に対する認知や理解が進むことにより、乗せない/入れないという制限が素直に受け入れられるようになる。また、制限する時には、簡易バリケードやテープを使うなど道具立ても決めておく必要がある。この道具立てが出てきたら、ああダメなんだとあきらめがめがつくし、上記のような情報アクセスが確保されていれば騒ぐバカは少ない。揉める事があっても、毅然とした態度で勇気をもって制限処置を取ってほしい.。それが、乗客に安全なサービスを提供しなくてはいけないJRの義務であり、より良いサービスの提供でもある。

 

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