自動車免許試験はもっと簡単でいい?

 

 日本では、自動車の免許証を取るのに金がかかりすぎる。それは、自動車学校なるものに入学し、多大なる時間と金を使い,その上たっぷり嫌な思いをしなければ免許を取得できないようなシステムになっているからである。自動車学校というものは必ずしも通う必要はなく、直接試験場にいって受験し実力さえあれば受かるというのが建前なのだが、誰もそんなことで通るとは思っていない。やはり自動車学校に行くことが必要だということになっている。

 

 アメリカでは自動車学校にあたるものはない。筆記試験は常識水準の問題であるから過去問を半日も勉強すれば十分であり、英語を母国語とする人間にとっては一時間でも十分かもしれない。この筆記試験に合格すると、仮免許証をくれる。これがあれば、隣に免許所持者が座っているだけで、路上練習ができる。普通、米国では高校2年生位で免許を取得することになるので、隣に父親か母親が座って、交通量の少ない裏道で練習することになる。当然、はるかに安上がりで時間もかからない。日本とは、えらい違いである。

 

筆者は日本の免許を持っておらず、ニューヨークで初めて免許取得にチャレンジすることになった。米国免許を取得しなければならない日本人向けに、ドライビングスクールなるものがあり私もそこでお世話になった。ただ、筆記試験に合格したら、先生が来てくれるので家庭教師を雇ったような感じである。私のアパートの前まで来てくれて、最初から運転してみますかと言われたのには驚いた。びびったら、先生がアパート地域よりもっと人通りのない住宅街の奥の方に連れていってくれハンドルを渡されることになった。交通量が少ないとはいえ一般道であり、おっかなびっくり初めての運転をした興奮は昨日のことのようである。こんな先生を雇うのは日本人だけで、普通のアメリカ人なら高校卒業までに親が脇に座って免許を取り終えてしまうわけである。

 

 確かに日本とアメリカとでは環境が違う。米国では車が絶対の必需品で、例えば買出しに車がなければ飢え死にしてしまう地域はいくらでもある。従って、原則合格させないわけにはいかないという状況がある。また、道路や駐車場に余裕があるので、運転が容易で縦列駐車などの難しい技術が不要である。しかし、日本の免許試験は無用に難しくなっていると思われる。車は贅沢品であり、公害の元でもあるからドライバーを増やさないよう難しくしているとでもいうのだろうか。本当にそうしたければ自動車保有にかかる税金を高くすれば良いのである。どうも巷間噂されている、警察OBの重要な天下り先になっていて、教習所というビジネスが儲かるよう保証されているという説が正しそうだ。規制緩和の方向性の中に、もっと安く簡単にする道がありそうである。一方でおそまつなドライバーが増えないような対策は講じる必要があるだろうが、それは免許取得時の妙な精神修養によって養われるものではないと思われる。

  日米の違いは、取得時だけの話ではない。実は取得の後も延々と続くのである。アメリカでは、免許の更改時期になると郵送手続きの書類が送られてくる。これに小切手を添えて送ってやれば完了してしまう。日本のように出頭が必須ではないのである。窓口が混雑するからなるべく郵送による更改を勧めるとお知らせに書いてあるのが米国流である。出頭が必須だと困るのは、海外勤務をしていて長くなると日本の免許が切れてしまうことである。ロスの7年半の勤務中に切れてしまい、小生は未だにゴールドカードがもらえない。それに日本の車検のコストは高すぎる。アメリカでは、2年に一度、排ガスの適格性検査をパスした書類を送ってやればいい。この適格性テストの値段は70ドル程度である。日本の車検では、何もいじらなくても10万ですめば御の字、なにかと修理が必要といわれてナケナシノ財布を叩かざるをえなくなった話もよく聞く。この差は車を持っている間、ずうっと続く違いなのである。
戻る