2009114

 

 

年金特別便と社会保険庁HPと電子申請について

 

 社会保険庁が昨年10月に年金受給者・現役加入者への発送を終了した「年金特別便」約1800万人分のうち278万人分が同月の末時点で転居先不明などで本人に届かず社会保険庁に返送されたそうである。(読売新聞110日)特別便の内訳は、1030万人分が青い封筒の「名寄せ便」で宙に浮いた5000万件に対して名寄せした分だという。残りの9843万人には緑の封筒の「全員便」を送ったのだそうである。小生の場合、特別便が届かなかった。毎年、何度も個人住所確認を会社で行われているのに会社が悪いのか社会保険庁が悪いのか、登録住所が十年以上も前の海外の住所になっていたようである。

 

 雇用主である会社を通じて住所修正をおこない、他の人に比べると一月遅れくらいで年金特別便を受け取った。しかしながら驚いたのは、今話題になっている標準報酬月額も無ければ年金支給見込み額もそこには掲載されていないのである。そこで前にもご紹介した社会保険庁HPがどんなものかトライしてみた。ずいぶん興味深い結果だったのでご報告したい。

 

まず、社会保険庁HPは下記の1,2のように加入記録と標準報酬月額の情報提供のページと年金支給見込み額のページが分かれてしまっていて、全く別の二つの手続きになってしまっている。両方を見たいと思えば、名前や住所、基礎年金番号などの入力を2回別々に行わなければならない。両方見たい人の方が多いのではないのだろうか? 少なくとも手続き1回で、片方でも療法でもOKというオプションを与えられる方が良いに決まっている。また、2の年金支給見込み額の中では@、A、Bという選択肢に分かれているのだが、どうも判りにくい。@は50才以下が対象で簡易計算だという。Aは50歳以上が対象で社会保険庁のデータに基づいて計算したものだという。Bは社会保険庁のデータに基づいた年金支給見込み額と加入記録の両方とも見れるのだが電子認証が必須のプロセスとなっている。電子認証が必要となると一手間かかるので、これを別格として後に記述することとする。@とAは何故分ける必要があるのかよくわからない。50歳以上でも40歳でも30歳でも後ろは仮定して計算するのだから同じであり、コンピューターが計算するのだからデータが存在する部分についてはそれに基づいて計算してくれてもよさそうなものである。この入口で利用者が立ち止まって手続きを考えなければいけないことがデメリットである。ともかくも下のURLからアクセスし、1とA−1または1とA−2という組み合わせで申し込めば、加入記録と標準報酬月額の推移及び年金支給見込み額の三情報を手にいれることができるところまで仕組みができていることはわかった。

 

そこで重大なポイントは、将来にわたりHPをどう使っていくのかがサッパリ見えていないことである。ここまでできているならと思わないだろうか? 一億通の郵送コストは、切手代80円と計算したら80億円である。国民の半分でもHPですませてくれたら40憶円のセーブができるという発想にならないのだろうか?HPで見てもらえば、一回だけでなく毎年、毎回のことなのである。何かインセンティブをつけてもペイする。国民の側からいえば、住所変更・年金種類の変更・給与変動などのイベントが起きた必要な時点で、その都度チェックできるのである。ところが、社会保険庁のHPは特別便上に宣伝もされていないし、官報による広報もされていないようである。いかに事務コストを減らすかを考えることが、小さな政府の実現のためには絶対必要である。

<社会保険庁のHP>

1.      加入記録と標準報酬月額の変遷について見られるページ

http://www4.sia.go.jp/sodan/nenkin/simulate/index.htm

基礎年金番号、住所、などを入力して申し込む。審査のうえパスワードが与えられることにより、アクセス可能になる。私の場合、住所が更新されておらず再審査となった。

2.      年金支給見込み額(http://www.sia.go.jp/sodan/nenkin/simulate/index2.htm

@     簡易計算

自分で加入記録を設定することにより試算。誰でも利用可。

A     社会保険庁で管理している個人記録に基づく年金支給見込み額の試算

50歳以上のみ対象で、それ以下は@を使用する。

WEBで申し込みし、結果は文書。

B     社会保険庁で管理している個人記録に基づく加入記録の照会及び年金支給見込み額の試算

電子申請のため電子認証が必要。結果は電子文書で送られる。

 

  

次に電子認証が必要な2-Bのプロセスについても色々不思議な点があったのでお知らせしたい。本来、加入記録の照会及び年金支給見込み額の試算が提供されているのでこちらの方が便利なはずなのである。まず驚いたのは、Bのボタンを押していくと、総務省のeGOV申請の総合ページに入ってしまい、再度、この総合ページの中から年金支給見込み額の申し込みページを検索しなければならないということである。“年金”と“見込み額”のand検索でなければ見つからないという恐ろしい不親切さである。もう一つは、電子認証を受けるには手間も金もかかるということである。まずは市区町村に行き、住民基本台帳カードを発行してもらい、それに電子認証を入れてもらう。さらに、ICカード・リーダー・ライターを買ってインストールする必要がありコストは締めて3400円かかった。

住民基本台帳カード        500

電子認証発行代金         500

ICカード・リーダー・ライター   2400

合計                3400

おまけに、住民基本台帳カードの期限は10年、電子認証の有効期限は3年だそうである。ICカード・リーダー・ライターもOSのバージョンアップを考えると5年ももつのか怪しく、ユーザーにとって金食い虫になりそうである。それよりも大問題に思えるのは、データのあり方が市町村ごとになっていることだろう。住基ネットは市町村ごとの発行で、住所が市町村を移ったら再発行が必要となっている。また、電子証明書の発行手続きをする市町村によってICカード・リーダー・ライターは異なるので適合性検証済ICカード・リーダ・ライター一覧を見て買えと総務省のHPにあり、この一覧のボタンを押すと全市町村ごとに機器がでているといった具合である。つまり、市町村を移るとこの3400円也の再投資と手続き手間がかかるということである。

 

今こそ、政府と国民は何をやろうとしているのか基本に戻って考えなおすべきである。

1.      まず、私は住民票の提出を海外から帰って世田谷区と千葉市で行っている。ところが、年金データには反映されないから海外の住所のままだったということである。結果として年金特別便がわたしの手元に着かなかったということである。どうもよくわからないのだが、このデータを連携させたくない人のさせないメリットというのは一体なんなのだろう?

2.      厚生年金の場合、データのメンテナンスを雇用主を通じて行っているため、一般従業員は全くこれを見ていない。年金手帳は預かりっぱなしで住所変更などの通知も雇用主に責任を押し付けてほおってある。そもそも、毎月いくら控除して会社がいくらマッチさせて年金の預かりはこうなっている、将来の支給見込みはいくらであるというフィードバックが全くなされてこなかったわけである。多くの人は、税金と同じように所得から控除されているだけで、この預けた金が将来どう返ってくるのかなど考えもしなかったし、チェックしようともしなかった。むしろ政治にからむ人たちが、意図的にそのような情報を与えようとはしなかったという方が正しいだろう。だれもチェックしないし、チェックする方法が与えられていないからこそ、標準報酬月額を誤魔化すというようなことも、簡保の宿やグリーンピアという大きな不採算投資も行われているといえる。将来にわたり、自分のデータがどのようになっているかというフィードバックが絶対に必要であり、個人はこれを通じて行政を監督・監査していく態度が必要である。

3.      年金データは基礎年金番号に、住民票データは住民票コードに関係づけられている。しかしながら、住民基本台帳カードの中身は11桁の住民票コードと4情報(氏名、住所、性別、生年月日)である。必要なことは個人を特定することであり、住所や年金制度を移っても正しい個人の名のもとにデータが関係づけられていく必要があるということなのである。大学生の息子が二十歳になった時に、国民年金の免除手続きの書類がきた。これは住民票データを連携させているからできるのだろうと思う。それなら何故私の住所は連携しなかったのかと思うし、本当に連携させればコードは一つで良いのである。

4.      どうもこの話になるとIT化の話になってしまい、ICカードやHPの話になってしまう傾向がある。しかし、ポイントはコンピューターがあろうがなかろうが一緒なのである。4情報では個人が特定できないし、長ったらしい名前をつけるわけにもいかない。その代わりにコードを付けるわけである。コンピューターがなければ台帳管理をするわけであるが、紙台帳であってもコード化は必要なのである。また、連携も必要なのである。ただコンピューターがあれば、それを早くできるだけの話なのである。私は米国でやっているように紙のIDカードでも配って、これを使って諸手続きを行っていくよう業務を進めていくべきだと思う。(今の住民基本台帳カードには住民票コードが印字されていない。これではあまねくコードを使っていくことには程遠い)

5.      データは連携していても、省庁別に不要なデータを見せないようにすることはできるし、そうすることは必要である。むしろしっかり監督し、無駄なデータベースや仕組みを作らせないようにするべきであろう。

6.      データが市区町村ごとになっている必然性は全くない。サービスはどこの地方の行政機関でも受けられるようにすべきであるが、市区町村を移ったら届けなおしなど論外である。戸籍とも連携すべきであり、戸籍は個人を正しく認識してこその関係性である。戸籍というのは市区町村のデータではないと思うのだがどうだろう。市区町村の役人の失業対策のためにほおってあるのではないかと疑いたくなる。

7.      目指すところは、米国の税金と社会保険を扱うsocial security numberを超え、税金と社会保険と医療を扱うIDを作り、行政の効率化であろう。医療は、検査データの相互利用や不完全な医薬分業などベースになるものが個人の特定である。高齢化社会の中で、小さな政府を目指すには絶対必要と思われる。

 

 

(2009年1月金井章男)

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