福井日銀総裁は無実か?

 

 福井日銀総裁が村上ファンドに投資していたことが問題になって、その資産が公開された。村上ファンドへの投資は、拠出金1千万円に対し運用益約1500万円、六年半で2.5倍になった。株式については、新日本製鉄、商船三井など五銘柄で計35000株を所有し、2003年3月の総裁就任時と比べ約2千万円値上がりしたそうだ。(日本経済新聞2006年6月21日)さすが経済のプロ、しっかり儲けているなぁと感動している場合ではない。

 

 拠出は日銀の内規違反にあたらず、福井総裁は自ら責任を取って月200万円の報酬の30%を7月分から6ヶ月間自主的に返納するということで、辞任の意思は無いとのことである。また、小泉首相及び御手洗日本経団連会長は進退に及ばずという判断を表明している。

 

 しかしながら、インサイダー取引禁止の立法趣旨から考えて日銀の上層部、中層部が好きなように経済取引をすることが許されるわけがない。彼らは、金融政策の決定者なのである。その情報に他人に先んじて触れることができる。もっと極端にいえば、自分が利益を得るためにその経済方針を変えたり、経済政策の発動のタイミングを変えたりすることさえもありうる。経済の番人、金融政策の決定者であることは、株や投資ファンドへの投資のような金融政策に非常に敏感に左右される資産の所有者であり続けることが、利益の相反だということである。これは会社の役員が自社株の売買が自由にならないのと同様の理由だ。米国の連銀総裁はその資産を公開し、株などの資産は就任時に信託預けにするという。それが、世界の常識であろう。市場経済を中心にすえてやっていくことは、人の欲に任せて運営し、人の欲に任せたままでうまく動いていくような規制なり、ルール作りをしておくということなのである。日銀の内規の中には総裁や理事の良心に依存する規定があるそうである。この規定は、日銀マンであればそのくらいの常識はもっているであろうという期待が裏にあるのではないかと思うが、現にその総裁が、「人間にそんな期待をしてはいけない、法に反しなければギリギリまで利益追求するのが人間の本性だ」ということを示してくれたのだから、日銀の内規は当然変えるべきだろう。

 

 そちらは今回の反省に基づき変えればいいのだろうが、世界にたいして「日本の中央銀行がこんなでした。法律に違反していません。」ということで現総裁が居座り続けていいものだろうか? 2月という微妙なタイミングで村上ファンドの持分を売っているのも非常に気になる。村上ファンドの拠出者の多くは、世界に広がっている。インサイダーでひっかかったファンド・マネージャーの村上氏、そのファンドに投資していたのが日本の中央銀行総裁の福井総裁で、これもインサイダーの疑いありと思えるような構図では世界を納得させにくいであろう。
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