原子力は夢の技術?


私たちが子供の頃、原子力は夢の技術でした。鉄腕アトムもエイトマンもたぶん小型の原子炉(それも核融合ができるような)で動いていたのです。しかしながら、ここまで原子力技術の府外なさを見てしまうと、日本の原子力はそもそも無理があったと思われます。実は、日本にはアメリカやフランスに比べ大きなハンディがあります。

第一に、日本の原子力発電所の稠密度は世界一だということです。IAEAによると20101月現在、世界で稼働中の原子炉は437基に上り、アメリカが最多で104基、フランスが59基、日本は三位で54基だそうです。ところが国土の狭さを鑑みて、1万km当たりの台数を計算すると、日本が1.43基、フランスが0.93基、アメリカが0.11基となる。日本の原発稠密度はフランスの1.5倍、アメリカの13倍だということです。さらに、日本は可住面積比率が非常に低い。日本の33.6%に比べ、フランスは72.1%、アメリカは75.3%であり、これを補正すると日本の原発稠密度はフランスの3.3倍、アメリカの29.1倍だということになります。国土が広ければもともと人があまり住んでいない場所に原子炉を作れるし、事故が起こった際にも汚染地を放棄する痛手が全く違います。

第二に、日本の地震発生頻度も世界一だと思われます。1994年から2003年までのマグニチュード6以上の地震は960回で、これは世界中の約20%となるし、世界中の火山の10%は日本にあるそうです。(注1)日本の陸地面積は、0.27%というから、地震の密度という意味でもいかに危険な陸地であることか。フランスやアメリカという古い造山活動の安定した国土の上にある国と比べ、日本は新しい陸地の上にあり地震・津波・火山噴火の可能性が高い国土なのです。そうなると耐震強度も何度も揺さぶられることを前提とした強度が必要ということになりそうです。

この二つを考えあわせると日本の原子力発電は極めて条件が悪い。フランスやアメリカに比べ、ずっとずっと高度な地震対策を施さないといけないということで高コストなものになってしまいます。鉄腕アトムを作れるくらいの技術力がないと難しそうです。

1.「大震災 これなら生き残れる」 山村武彦 朝日新聞社


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