放射能汚染水問題の目処

日経新聞でも気になる記事を見つけた。「エネルギーの明日1 戦い40年小さな一歩」(2013年3月12日)という記事の中で“原子炉の冷却後に出る汚染水をためるタンクは約830個あり、総量は32万トンにのぼる。野鳥が住む敷地内の森を伐採し、高さ5メートル余りの壮大なタンクの森が生まれた。敷地も限界に近づきつつあり、2年後には満杯になる。海洋への再放出が現実味を帯びるが、地下水バイパスなどが完成すれば毎日400トンずつ増える汚染水の発生も半分に減る。月内にも新しい汚染水処理装置を動かせば当面の汚染水問題は回避できる。ようやく汚染水の処理にメドがつきつつある段階になったが、ここまで2年もかかった”とある。

海洋への再放出が現実味を帯びるなどと軽々しく言ってもらっては困る。前回は緊急避難という名目がなくもないが本来絶対許されざるものである。そんなことにならないように備えるのが原発を行う国の責任ある態度というものだ。これをやったら中国のPM2.5よりもお粗末であるし、世界中から非難を浴びるだろうし原発を続ける資格もないと言えるだろう。

第二の地下水バイパスとは何のことだろうかと調べた。山から流れてくる地下水が建屋内に毎日400トンも流れ込んでいるため、これを汲み上げて海に放出するのだそうだ。この水は汚染されていないということで漁業協同組合の合意も得られ4月から実施されるらしい。福島第一原発の高橋毅所長は、この計画により、たまり続ける汚染水の限界をある程度ひきのばせると会見で述べているということである。どうも私の頭ではスッキリしないのだが、地下水が入ってきているということは出て行ってはいないのだろうか?ある記事は、建屋という升に上から地下水が入り、満杯になると上からあふれるからバイパスさせるのだという模式図を示している一方で、水というものはコンクリートの壁をスピードは遅いが通り抜けるものであるしヒビなど入っていればもっと流通するとのべている。ただ、上からあふれるのとはスピードと量が違うということのようだ。

そして第三の月内にも動くという汚染水処理装置は当面の汚染水問題を回避させることができると書いてあるので、当面は大丈夫だとしてもやはり再放出問題に行き着いてしまうように読める。第二のバイパスに関連した発言等を読んでいるとまだまだ見通しがたっていないのは間違いないようだ。

何とも危ういことがあっさり書いてある。これでは日本に(あるいは人類に)原子力を扱う力があるのか疑わしいのではないか!冷静な事実・事態の把握と、自分の技術力の見極めが重要だ。

2013年3月金井章男

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