何、この試験問題!?

 

昔々、私がまだ大学生のころの話。今思い出しても悪夢です。

 試験シーズンでお勉強していましたが、ふと気付くと試験時間に間に合うかどうかというような時間になっていました。「え〜! どうして」なんて言ってみても始まりません。ドジは昔からです。「しかたねえか」、とにかく大急ぎで荷物をまとめて出発しました。宝くじと同じで受けなければ受かりませんからね。

当時私は新中野に住んでいて、行き先は一橋学園。つまり、丸ノ内線(新中野 →荻久保)、中央線(荻窪→国分寺)、西部多摩湖線(国分寺→一橋学園)と乗り換えて行かねばなりません。荻窪からの中央線が問題でした。特別快速は荻窪に止まらない。次に来たのが武蔵小金井行きで国分寺まで行かない。ようやく各駅停車がきて国分寺に着いたら西部多摩湖線が出ていくところで、電車の後部が遠ざかって行った。次は20分後で、このまま待っていたらヤバイ。駅前でタクシーを拾って学校まで行くことにした。タクシーというものは高いが便利であることは知っていたので、清水の舞台から飛び降りる覚悟で乗ったのだ。自分のポケットにある現金とタクシーのメーターを見つめていたが、メーター料金は手持ちを上回ってしまった。

そこでタクシーを待たせておいて、大学構内にある学生寮の友人の部屋に飛び込んだ。が、友人がいない! 「4人部屋なんだぜ、誰もいないなんて」と絶望していると、友人の友人らしいのが訪ねてきた。仕方がないので訳を話して彼に借りてタクシーに払うことができた。学生寮から試験会場の教室までの距離もけっこうある。時計を見れば試験の開始時間はとっくに過ぎているので、ひーひー言いながら教室に走っていく。タクシー代まで使ったのだからせめて受験させてもらわねばと会場に駆け込めば、静まり返った階段教室と呼ばれる大会場からの冷たい視線に恥をひしひしと感じた。小声で「すみません遅れました」と言ったら答案用紙を渡してくれたけれど、この用紙を見て絶句した。なんと平仮名ばっかりの紙。よく見れば、それは近世文学(本居宣長や井原西鶴って平仮名なんですよね)の問題であり、いつもの教室は別の科目の試験会場となっていたのだ。もっと小声で「申し訳ありません」と、この会場を後にしました。

私の受ける試験は「マルクス経済学T」。試験会場を貼りだしてある掲示板を見にいって、やっと辿り着いた会場では、漢字のたっぷり入った答案用紙をもらった。漢字の問題をもらって喜んだのは後にも先にも初めてです。ラッキーなことに、まだ会場を出た人がいないからということで受けさせてもらえました。結果はどうだったか聞きたいでしょうな。かろうじて合格しましたがな。ナケナシの金をはたいたタクシー代の投資は功を奏したわけです。メデタシ、メデタシ。

(2011年11月)

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