駐車場閉め出され−閉じ込められの記

 

200974()に、フランス北西部をレンタカーで回った際、ルアーブル(Le Havre)で、ホテルにチェックインしようと、ホテル駐車場の有無をフロントに尋ねたところ、「ホテルには無いが、向かいに駐車場があるのでそちらに停めるように」との返事。確かに向かいに「オスカー・ニーマイヤー パーキング」と看板を出した駐車場があり、映画館と広場の地下に設けてあるようだった。映画館は楕円推の上部を切り落としたような形で、なるほどブラジリアを設計した建築家、オスカー・ニーマイヤーらしい造形であった。

地下へ入っていく斜路を降りて駐車券を取って、ゲートを開け、比較的空いている駐車場にスムーズに車を停めた。駐車場の中には、昼間にルーアンで駐車料金を支払った清算機と同じ機械があり、「フムフム、分かっとるわい」てなもんだった。駐車券をダッシュボードに置いて、無事にホテルへチェックイン。

翌朝、ホテルをチェックアウトし、駐車場へ向かうと、地下へ降りるエレベーターへの入り口には鍵が掛かっていて開かず。そこで昨日車で入った斜路へ行ってみると、こちらはがっちりとシャッターが下りていて一切入れず。掲示を良く見ると営業は月曜から土曜までで、日曜は駐車場は休みなのであった。これでは一切駐車場に入れず、車を引き出すことは不可能なのか!? 呆然としたが、ここはホテルに薦められた駐車場なのだから、ホテルに駆け込めば何とかなるはず、とチェックアウトしたばかりのホテルに戻り、フロントに言うと、「駐車券をシャッター前の機械に差し込めばシャッターが開くのだ」という。「駐車券は車の中に置いてある」というと、暫く考えた後、「私はあの駐車場の月契約をしているから、このパスを貸してやる。これを差し込めばシャッターが開くから、そしたら車を引き出せる」という、まことに有り難い言葉。早速定期券のようなパスを借りて、またシャッターまで戻り、機械に差し込むとガラガラとシャッターが開き始めたのは感激的であった。

昨日より更に空いている駐車場の中で、車はすぐに見つかり、ダッシュボードの券を恨めしく取って(これは正当な駐車であることを示すため、普通は券を見えるように置いておくのではなかったか?アメリカではそうだったが・・・)清算機へ向かった。券を入れると5.3ユーロの表示。ほいほいと、ルーアンでやったようにクレジットカードを差し込むと、ベロッと吐き出す。あれ、カードはだめか、と5ユーロ札を差し込むと、これまたベロッと吐き出す。さては5.3のところに5を入れるからか(30サンチームのコインを足そうとしたのだが)と思い、今度は10ユーロ札を入れたが、これまた吐き出す。やや進退窮まって、「言語」(英・独・西語表示が出来る)ボタンや、何やらの「説明」らしきボタンをいくつか押しているうちに、機械は全く反応しなくなった。駐車券は飲み込まれたきり、機械は一切反応せずという事態である。家内も動員し色々やってみたものの、状況は変わらず、先ほど入ったシャッターのところへ行って見てもシャッターは当然ガンと下りたままで操作すべきスイッチも無い。思いついて、ホテルフロントで借りた駐車パスを出口ゲートのチケット差込口に入れてみると50数ユーロなる表示が出て吐き出されてきた。これが月ぎめ料金なのか?いずれにしてもそれも開扉には役立たず、我々は日曜の休業中の駐車場で、最初は入るのを拒否され、今度は閉じ込められてしまったのだ。

清算機には電話番号が書いてあるが、フランス語で状況を説明出来そうにないし、第一電話がない。携帯も持っていない。明かりの消えている管理人室(前日はちゃんと人が居た)へ向かい、周りをうろうろしてみると、ポストのようなものに「EMERGENCY」の表記があるボタンがついている。おお、と思い藁にもすがる気でそれを2度ほど押すと、やれうれしや、人が答えて、おまけに懸命に英語で訴える言葉に、きちんと英語で答えてくれた。幸い、この駐車場が「オスカー・ニーマイヤー パーキング」という表示があったのを憶えていたので(建築屋ならでは)、すんなり話が通じ、「10分ほどで人が行くので、そこで待て」との返事。漸く一息ついた。

10分よりは掛かったがまもなく人が現れ、この人には英語が通じなかったが、駐車券が清算機の中にあることは通じ、清算機を開けて、何やら端の折れ曲がった駐車券を取り出し、5.3ユーロのところ、釣りが無いとのことで5ユーロにまけてくれた。清算済みのこのチケットを出口ゲートの機械に差し込んで、ゲートが開き、進んでいくとシャッターも開いたときの嬉しかったこと。娑婆への生還という気分であった。漸くホテルの前に戻って駐車し、フロントの男に謝りながらパスを返した。持ち逃げを疑ったのではないかと思うくらい長い時間(借りてから1時間以上)経っていたが、「使えただろう?」といっただけで、怒っている様子はなかった。客が沢山いて多忙だったこともあるようだった。

ホテルチェックアウトからここまで2時間かかり、貴重なモンサンミッシェル訪問日の朝を潰したのであった。

岡崎憲秀

失敗談TOPへ