養子縁組事件と国民統一ID

 

“首都圏の男女約60人が養子縁組を197回にわたって繰り返し、パスポートの不正取得にかかわったり、多重債務者が性を変えて借金を重ねたりしていたとみられることが、神奈川県警への取材で分かった(読売新聞2010.11.1)”ということである。不法在留の韓国籍の女が逮捕された時に持っていたパスポートには、養子縁組によって作り出された日本人の女の姓名が使われ韓国籍の女の写真が貼られていた。その日本人の女は多重債務者であり、新たな借金のために姓を変えなければならず9回も養子縁組を繰り返していてその中には暴力団関係者が含まれている。韓国籍の女は偽造パスポートを得るために150万円を払ったと証言しているようだし、この日本人の女はパスポート作成にかかわり、印鑑登録書と保険証を渡し3万円をもらったと証言しているようだ。

 つまり暴力団の資金源になっているようで、それはそれで大問題なのである。だが、この記事は、それだけでなく姓名というIDがいかに不完全なものかを物語っている。養子縁組さえすれば、姓名・生年月日・性別・住所という個人認証するための4要素の最重要の一個が変わってしまうのである。一方で国民統一ID(国民一人一人に生まれた時から着くIDであり、米国のsocial security numberに相当するもの)というものを制度化したら、このように自分の過去を消し去るようなことは全くできなくなってしまう。私は、そのような権利を認める必然性を認めなくてもよいと思っている。結婚・離婚を繰り返しただけでも、姓名を普通は変えることにはなる。そして名前も変えることができる。性同一性障害の問題の中では、性別という記録も変えたがっている。ある特定の個人を捉えるということであれば、国民統一IDは不変でその属性として姓名があり、性別があり、住所がありで良いと思う。 

 改めてあたりまえのことを言うが、現在の宙に浮いた年金の調査作業など国民統一IDなしに完了することは難しい。それ以上にこれからも間違いを生み続けることになる。これをクリーンアップするには早く国民統一IDを制度として確立することである。過去の清算よりも、これからの間違い・混乱を生じさせないことが重要である。過去に入力誤りや不完全データとなってしまったものは、訂正する根拠も推定や判断が入ってくることになる。むしろクレームがあったもので宙に浮いた年金データに関わるものは全て認める方向で処理したほうが安上がりではないか検討する価値がありそうに思える。前に向かうことを中心に据えた政策を展開していかなくてはいけない。国家百年の計の一歩を踏み出す政策を今必要としている。
(2010.11.7)

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